甘い囁きは耳元で。

「優香ちゃん」

私を呼ぶその声はやっぱり、


いつも変わらない。



「なんですか、和樹くん」
「うん、それ、いいね。
 本当は呼び捨てのほうがいいんだけど。ゆっくり慣れていこうね」


私を掴んでいたはずの手は、いつの間にか腰に回されている。

体の太さ、分かっちゃうよな。
なんてちょっと乙女チックな考えに至ってしまい小さく苦笑い。


体の位置が近くなった。
なれているのかなれていないのか。



彼は、モテないわけではない、と思う。
普段の様子を見ても、なんとなくそう感じる。


それでも、彼の瞳の中に今写っている自分の姿に、どこかすごく安心をしてしまう。



彼は私の座る座椅子の隣へと移ってきたことにより距離はいよいよなくなる。



弾む音



「なんですかー和樹くん」
「いい香りする」
「香水かな?」
「俺、香水嫌いだけど優香ちゃんの香水なら好き。


うん?あ、優香ちゃんがつけているから好きなのか」



納得したように言う彼に、私はいつも困る。

慣れていないんだ、そんな優しい声にも、言葉にも。



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