甘い囁きは耳元で。
困った、困った。
助けを求めるようにと彼へ視線を注ぐ。
「優香ちゃんは、どれだけ俺を惚れさせたら気が済むの」
少し背の高い彼。
もちろん、座ってもそれは同じ。
小さく囁く声は私の耳元に彼の口元から直接響いてくる。
くすぐったい…
でも、―――
いつも変わらない優しい声なのに少し交じった吐息が、艶めかしい。
男の人なのに。
色っぽい。
「和樹くん、はずかしー」
茶化すように笑って見せて、胸を軽く押しお互いの体のあいだに空間を増やした。
「っ……」
しまった。
そう思ったときは既に捕らわれている。
私を見る、彼の目線に。
「誤魔化さないで」