ありがと。
あたしは隼人君の胸で泣いた。


隼人君はずっとあたしの頭となでてくれた
まるで子供をあやすお母さんのように。



「…かのん。大丈夫??」



「…グズッ・・う・・うん。大丈夫!」



あたしは隼人君の胸から離れた。
それと同時に隼人君は自分の家に帰ろうとしたが
あたしは気がつかない間に隼人君の服の裾を握っていた。



「っえ?どうしたの?…カノン??」



「っえ?…っあ!!ごめん!!なんでもない!!」



あたしはあまりの恥ずかしさに顔を下に向けた。
隼人君は「ハハッ」と笑ってお茶でも出せと催促してきた。



「なんであんたにお茶ださないとダメなのよ~」



「いいじゃん?あーんな顔で裾掴まれてたら何もしないわけないじゃん??」



「バ…バカー!!」


一昨日買ったばかりの紅茶を入れながら
赤くなった顔を必死にみえないようにした。



「なんで泣いてたの??癌でもさぁ、治るんだよ。頑張って治せよ。」




「治るなんて簡単に言わないでくれる?医者に治る確率30%って言われたんだよ?」


ティーポットからカップに入れて隼人君に渡した。
隼人君は気まずそうに紅茶を飲んだ。



「…なんかご・・ごめん。」



「いいの。別に・・。そういえば明日からあたし入院することになったの。」



「ホントなんかごめん?俺で出来る事あれば何でもするから言ってくれよ??」



真剣に言ってくれた隼人君の目はとても強くてその瞳に吸い込まれそうだった。
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