甘い囁きが欲しい
「初めて見た」
「す、みません。
こんな姿、部長に、迷惑、かけちゃう」
こんな時まで周りを気にする彼女の姿を、涙を流す姿をその男は知っているのだろうか。
彼女が辛い時に、そっと寄り添っているのだろうか。
壁際にいる彼女を反対側からは見えないように、カウンターへと右肘を付き、そっと左手でやわらかな髪に触れ頭を撫でた。
綺麗な、涙だな
こんな邪な気持ちを抱いている俺を知ったら彼女は幻滅するだろうか。
「そんなことより、優香ちゃんがツライの我慢しているのが俺は嫌だなぁ」
俯いてしまった彼女の表情はうかがい知ることはできないけど、てから感じる震える姿に。
そのまま何度も繰り返し頭を撫でる。
「優香ちゃんが、こんなに辛い思いしてるの、彼は知ってるの?」
畳み掛けるような言葉は許されないのだろうか。