甘い囁きが欲しい


「し、りませんし、言いません。
 こんなの、めんどうだと、彼は思います」


しゃくりあげそうになっているのだろ、それでも必死に言葉をつなぐ彼女。

「それでも、私が勝手に、好き、だから」



彼女の同期の、部下が以前話していた言葉を思い返した「甘えたがり」
なら、なぜその姿をその男へと向けないのだろうか。


向けられない、のだろうか?


「彼、といられれば、嬉しいし・・・




 でもッ 好き、なのに、苦しい、んです」





「ぶちょ、う。なぜでしょう、か。


 好き、だけじゃ、足りなくてッどんどん、わがままになるん、です」



間近く言葉をつないでいく姿に、俺が限界だった。

せめて、彼女の「尊敬するいい上司」でいようとしていた自分の化けの皮が剥がれていく。
どんどん、素の自分が現れる。








「そんな男、やめちまえ」




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