お茶の香りのパイロット
フィアの薄れた意識の中で、自分の熱い体が誰かに貪り尽くされるように抱かれているのを見ていた。

涙はこぼれていくのに、手も足も自分の意思とは関係なく相手を求めていくばかり。


「なんで?私どうなってしまってるの・・・。
魔法で操られてるんだわ。
まるで恐ろしい儀式のよう。だけど、私の顔に何かが降ってきてる。

涙?あなたも泣いているの・・・。どうして謝るの?」



フィアは悪い夢でも見ていたかのように、目覚めるとルイリードと会ったときのベッドにいた。


ただ、最初と違ったのはベッドから起きると何も身にまとっていなかったことと、体に痛みが残っていることだった。


「お嫁入りさせられたんだわ。
恐ろしい儀式は現実だった・・・。ああっ・・・。うう。」



テーブルの上に新品の女性用の服が下着から靴下まですべて用意されていた。

それを着て、1階へと降りると、リクがにっこり笑って言った。


「よく眠れたかい?まずはご飯をお食べ。
食べ終わったら、すぐそこのお医者へ行っておいで。」


「お医者様って・・・!?」


「今日はね、そこの診療所はふだんは内科の医者しかおらんのだけど、今日は産婦人科の医者が女たちの検診のためにきてるんじゃよ。

あんたも子どもの産める年なんだから、貴重な検診を受けて来なさい。
ルイもそういって出かけたよ。夜まで用があるとか言ってたから、夕飯まで帰らないだろうし、診察してもらっておいで。」


「そ、そうなの。ルイリードさんは出かけてしまったのね。」



フィアは正直なところ若い娘の気持ちとして、産婦人科なんてかかりたくないと思ったが、リクのすすめとご近所の村の娘が母親とともに診療所へと次々に入っていく姿を見て、自分も受けた方がいいのではないかと診療所へいくことにした。


特設用に儲けられた更衣室はとてもにぎやかで、診察の終わった女性や自分と同じように恥ずかしさに悩んでいるような娘たちがいろいろとおしゃべりしていた。


すると、フィアと同じくらいの年頃の村の娘が2人で話しているのがきこえた。


「ねぇ、きいた?診察してくださっている先生って、独身でカッコイイ男性なんですって。
どうしよう・・・私恥ずかしいわ。

あなただって、抵抗あるわよね、彼にだってそんなあけっぴろげに見せたりしないのに、診察なんてねえ。
私、赤ちゃんが飛び出してくるときまで受けたくないわ。」


「私はこんな情報をきいたわよ。
なんか家が代々、産婦人科の先生なんですってよ。
だから、女性器なんて機械いじりとなんら変わらないから、淡々と診察してさらっと診断結果を話してくれるから、恥ずかしがる必要もなかったって先輩たちが言ってたもの。」


「そんなものなの?あ~~~そうかな・・・いかにも脂ぎったおっさんよりかはきれいなお兄さんの方が感じちゃうかもしれないしね。あははははは。」


「やだ、もう!!」



フィアは緊張しながらも、この2人についていってさりげなく診察を受ければいいだけだと自分に言い聞かせた。
それに、昨晩のことが知りたかった。

自分の体がどうなってしまったのか、性交渉があったのなら診察を受ければはっきりわかるはずだと思った。


内診検査の後、フィアは更衣室で話題になっていた産婦人科医と対面した。


「あれ・・・?(誰かに似てるような気がする・・・髪の感じはアルミスっぽい?、眼鏡の下は・・・誰だったかしら・・・。)」



「今日の担当医のリアンティルです。え~と・・・女性特有の病気などは見受けられませんでした。
以上です。お疲れさまでした。」


「あの、先生!私・・・」


「何でしょうか?」


「私、もしかしてレイプされたような痕跡はありませんでしたでしょうか?
あの・・・男の人の精液とか検出されたりとか・・・わかりませんか・・・?」


「あなたは、レイプはされているようには思えなかったんですがね。
お連れの女性のお話ですと、婚約者の方と一夜をお過ごしだったということでしたし、乱暴な扱いは受けておられませんけど・・・何か?」


「あ・・・いえ・・・もういいです。」


リクに先に家へもどってもらうように言って、フィアは診療所の裏の道へと歩き出すと、診療所の裏庭にはたくさんの花が咲いていて、フィアは庭先に置いてあったベンチに座って庭を見つめた。


日が傾きかけて、そろそろもどらないといけないと思いながら、ふうとため息をついて立とうとすると、誰かがさっと両腕をささえて起こしてくれた。


「ずっとながめておられたようですね。大丈夫ですか?
レイプだとか物騒なことを言われておられましたが、何か気になることでも?」
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