お茶の香りのパイロット

フィアがセイリールのサブパイロットとして特訓を受けている頃、アルミスたちは白い機動性ドールの討伐に追われていた。


ヤーガンとディッドの動きもよく、確実にドールを仕留めてはいるものの、ドールの数がいっこうに減らないことに頭を痛めていた。


しかも、開発スタッフの要であるアルミスが魂を半分持っていかれたかのように、黙ったまま俯いているのをスタッフたちは目撃していて、みんな心配していた。


とくに、ディーナは目の前でフィアを連れていかれてしまったことに責任を感じていて、暗い表情のアルミスを見ると心が張り裂けそうになっていた。



(フィアの居所はわかっているのに、姿が見えないなんてどういうことなの。
ワガンが調べた結果でも、黒い翼の男はルイリードという男でロボットはセイリールだとわかって、ときどき白いドールやドール使いのロボットとも戦った記録が残っている。

なのに、戦闘後の姿が見当たらないなんて・・・どこにくらませているのか?
どういう仕掛けがあるのか・・・?)



アルミスはルイリードを自分のパソコンで調べたが、どうしても何者かもつかめなくていらだっていた。


「ルイリード・・・何者なんだ!
どういう仕掛けで居場所がわからない。
フィアだってどうして行方不明のままなんだ・・・。
死体だって出てきやしないし、死んでるなどとても思えない。

どこでどうしているんだ・・・私の声が聞こえたなら何か返事をください。」



念を送っても反応はなかった。

悲しみにくれるばかりなところに今日もナオヤの檄がとんだ。


「アルミス、いい加減にしろ!
気持ちはわかるが、君がしっかりと敵を倒す糸口を見つけないと、いずれここを見つけられて俺たちは全滅するしかなくなってしまうんだぞ。」


「ああ、わかってる。」


「いや、わかってない!
今の君には覇気も余裕も感じない。
ラーガだって、いつも見学状態と逃げばかりでかわいそうだと思わないか?」


「私にどうしろというんです?」


「ラーガとアフィニの行動を速くするようにした方がいい。」


「軽装備にしろというのですか?」


「いや、軽装備にしたら狙い撃ちされてすぐにだめになる。
動きについていくんではなくて、とらえる能力をあげるんだ。
前から言ってたじゃないか・・・早く着手しないと!」


「それをやろうとしたら、アフィニのパイロットが必要なんだ。
フィアがいないと・・・できない・・・。」


「アフィニに乗れるパイロットを補充するんだ。
どのみち、フィアはアフィニを扱うには少し未熟だった。
結局、放り出されてしまったようだし、ルイリードってヤツが助けてどこかで身を隠して療養しているのかもしれない。

回復しても戦えとはいえないだろ。」



「それはそうですけど・・・。いいでしょう、補充しましょう。
ただし、パイロットは男性で捜してください。
女性は困ります。
私はフィア以外の女性とは組みたくありませんから。」


「わかってるよ。(はぁ・・・重症だな。せめてフィアが保護されているところだけでもわかれば、がんばってくれるようになるんだろうけどなぁ。)」
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