お茶の香りのパイロット
ラーガは何も言わなかったが、ルイリードはラーガを手で撫でた。

やさしい温もりが伝わってきたことで、ルイリードは笑みを浮かべた。


「ほんとに優秀だな、ラーガ。
俺を捨てて出て行った母親がアルミスを連れて出ていかなければ、もっと早く戦争を終わらせることができただろうに・・・。

今さらだけどな。こうなった以上、これが宿命なんだ。
ラーガ・・・フィアには申し訳なかったと思ってるんだけど、フィアは俺の子を産んでくれるんだ。
そしたら、俺の子のフォローもしてやってくれないかな。

アルミスからは恨まれっぱなしかもしれないが、子どもに罪はないって・・・甘いかもな。
だけど、フィアの子でもあるから、力になってほしい。」


「子どもの顔を見てから逝ければいいんだけどなぁ・・・。
死にたくなんかないけど、俺では無理だからな。
ラーガ、強くなってくれ。」


「・・・・・。」



それからのルイリードとフィアはセイリールで何度も出撃を繰り返しては機動型白ドールをつぶしてまわり、白統制ロボと工場を見つけてはつぶしてまわった。


敵の攻撃もあせりが見えたのか、だんだん熾烈になっていったが、さすがにフィアのお腹が臨月を向かえたとき、ルイリードは1日病院へ行くとフィアに嘘をついて、アルミスの経営する喫茶店へと出向いた。



ラーガを失って精気をなくしかけていたアルミスだったが、ナオヤがわざと開発から遠ざけて休ませるためにリンダやカイウとともに店に立つように言ったからだった。


日常生活程度なら、普通の青年にもどりつつあったアルミスのところへ、ルイリードはやってきた。


「生きてるか?」


「お、おまえは・・・!何をしに来た?俺を笑いに来たのか?」


「まだ、何も思い出さないのか?」


「思い出す?俺は忘れちゃいないさ。
おまえが俺を打ち砕いたことをな。
このとおり、もう戦う力も残っていない。見たままだ・・・わかったら帰ってくれ。」



「いいや。思い出していないのがわかった以上、俺と戦ってもらおう。」



「なんだと!」



「こんな町の中でロボットで戦おうなんて思っちゃいないさ。

ちょっと人気のいないところあたりで、素手でやらないか?」


「なんで、そんなことを俺がやらなきゃいけない?
もう負けを認めているんだ。」



「いや、おまえは俺と戦う。
俺に勝ったら、おまえはフィアとラーガとフィアの子を手にいれることになるからな。」



「何!?何をいってるんだ?
素手でやりあって、報酬が3人の命か?バカにするにもほどがある。」


「バカにしちゃいないって。
嘘をついてもいない。
もうすぐ寿命が尽きるというのに嘘を言っても意味がないからな。」


「寿命が尽きるだと?どうして・・・」



「話はあとだ。果し合いを受けるか受けないか。どっちだ!」


「もちろん、受けるさ。」


「そうこなくちゃな。」


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