お茶の香りのパイロット
ルイは白ドールの中枢回路と統括ロボを量産している最大規模の第一工場へとやってきた。

敵もセイリールのことを警戒していたらしく、司令官クラスの人間と統括ロボが10体ほど飛び出してきた。

それに続いて、機動型ドールが敷地いっぱいに近いほど、順番に地上に出てきている。



「すごい歓迎ぶりだな。しかし・・・アーティラスの気配がない。
ヤツはいったいどこに隠れているんだ?」



セイリールの結界能力が落ちてきていることもあって、ドールの攻撃をかわすことができても、統括ロボットのバリアで通常の攻撃ではなかなか工場の撃破が難しかった。


「ちっ、結界とは別にバリアを用意していたとはな。
魔力がないパイロットでも動きについていければ、十分戦えるってわけか。

しかし・・・俺にはそんなバリアは通用しない。

神経を集中させて、フィアの情報処理能力を利用して作った索敵システムを展開すれば・・・。

おわっ!アーティラスが最近までここにいた?」



工場のいちばん奥にアーティラスが自分用に開発していたと思われる試作品のロボットを確認できた。


「でも、なぜこれをここに置き去りにしてる?」


ズズーーーーーン!


「・・・っ・・・うう。攻撃が当たった?あの試作品か?」


試作品らしきロボットから攻撃とともに何かがきこえてくる。



『王は知っているぞ。悪魔の魔力は吸い取ってやる。
奪ったものは返さなくてはならない。

口惜しい・・・口惜しや・・・魔は消え失せろ。

王は魔力を食う。ここから出せ。』



「おまえのマスターは誰だ?おまえは魔力を吸い取るのか?」


ルイリードは工場内で頭が重いのは体調が悪いからかと思っていたが、どうやらこの謎のロボットのせいらしい。


「我はアブリール、ウィウスの正統なる守護神。
アーティラスはマスターを殺した。

新しいマスターを望む。」



「アブリール・・・正当なるって・・・王様の専用機だというのか?
じゃ、どうして継承権1位のアーティラスが使えないんだ?」


「黒い邪悪な魔力は我を狂わせる。
種類の違う気が我を狂わせる。
おまえも違う気・・・アーティラスに似ているが、少し違う。」



「俺はルイリード。おまえを救ってやりたいと思う者だ。
おまえは誰を待っている?

俺はこの工場を破壊するためにきたが、おまえを破壊したくはない。
おまえの望むマスターは誰なんだ?

アーティラスでなければ誰だというんだ?
王様はおまえを誰に託すと言った?」



「我の待つマスターの名は・・・アルミス・レイ・ロングリエ・ウィウス。」


「アルミスか。そうか・・・国王はもう後継者をアルミスに考えていたんだ。
そういうことか・・・。

こいつをアーティラスは手に入れたかったのに、アブリールは言うことを聞かなかったんだな。
いくら俺の健康を横取りしたところで、本質が違えば魂の一部である機体は違いがわかっているだけに、テコでも動かなくなったのか・・・。


アブリール・・・おまえの願いをきいてやろう。
俺はアルミスと同じ父親の兄だ。彼のもとへ送ってやる。

このセイリールの魂を積み込んでアルミスのもとへ行くんだ。
そして、アルミスと俺の息子のルイフィスへと伝えてくれ。

アーティラスを倒してこの世界に存在する魔力変換ロボをすべて消し去ってくれと。
おまえたちの魂は消えない。
兵器のない世の中にしてほしいという意味だ。わかるか?」



「わかる。平和で美しい世界・・・それが祖のマスターの意思。」


「そうだ。それでいい。じゃ、すぐにアルミスのところへ行ける魂と回路をつけてやるから、援護してくれ。」


ルイリードはセイリールに自爆装置を動かせるだけの魔力回路だけを残し、アブリールにセイリールの持っているすべての情報回路を移植した。



「はぁはぁ・・・ゲボッ・・・うう・・・くそ。意識が薄れる・・・。
もう少し・・・もう少しだ。
俺の魂よ、アブリールをアルミスのもとへと導け!

さぁ、アブリール・・・飛んで行け!俺の弟のところへ・・・頼むぞ。」



「ルイリード、さらばだ。勇者に礼を言う。」


「礼には及ばないさ・・・さてと・・・セイ、最期の仕事をやろうぜ。」


「了解、マスター・・・・・装置起動・・・! アルミスへ未来を託して・・・マスター、ルイリード。」



ゴゴゴゴ・・・・ゴ・・・ドドドドドーーーーーーン!!!!!



第一工場は轟音と真っ黒い煙とともに敷地内すべてが火の海になってドールもロボットも搭乗者も消し炭と化した。
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