世界で一番、ずるい恋。



「……私は大丈夫だからーー」

「別に無理しなくて良いんじゃない?」




恋那ちゃんも一緒に、そう言おうとした言葉はあっさりと陽果に遮られてしまった。

慌てて陽果に目を向けると、切なそうに瞳を伏せていた。


……あの日々を思い出して苦しくなるのは、私だけじゃない。

何でそんなこと忘れてたんだろう。


陽果だって、辛いんだよ、苦しいんだよ。


ぶわっと吹いた春風。

スカートを押さえ、目を閉じた。



そして、風がやんだのを確認して目を開いた時。




「……あっ、」




私は視線の先に、律を見つけた。

恐らくこの学年の中で誰よりも派手な髪色をしている彼。


その高圧的な雰囲気からは考えられない、優しい人だった。


私はそんな貴方を大切にする方法が分からなかった。

……やっぱり一緒に写真撮ろうって言ったら、律は困るよね?




「……っ、」

「茜?」








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