それでも、課長が好きなんです!
 柏木佑輔は一度現れたら、またしばらく現れないだろうと勝手に予想していた。
 でも自分の予想には反して今度は頻繁に現れるようになった。
 いつも大抵夜だ。
 用件はだいたい「腹減った」、「暇」、この二つだった。
 わたしは家政婦じゃないと言えば、「じゃあ雇うから家政婦になって」と言われた。
 口論になりいつも玄関先で騒いでいると「あまり騒ぐと撮られるぞ」と軽い脅しを受け部屋へと入れる。
 週刊誌にモザイク入りで載るのなんてごめんだ。
 そっちは暇でもわたしは暇ではないと言えば、部屋の片隅に積まれたレンタルDVDを横目に「一人で寂しく恋愛映画見るより、俺と会話した方がマシだろ」と言われた。
 ……放っておいて欲しい。
 でもキスをされたのはあの一回きりだったし、あれ以来変なことをしてくることはなかった。

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