【完】君ノート
重なった手のひら。
優くんの指と、私の指が絡まる。
右の肩と、左の肩は、離れないように並んでいる。
「それでも、もしも花音が俺の前からいなくなったら…。
そーだな。
例えば、サッカーを見に日本の反対側のブラジルとかにいても、
花音が俺の名前を呼んでくれたら、迎えにいくよ」
「……私、サッカー見ないよ?」
優くんの変なたとえ話に、ふっと吹き出してしまった。
「もしもの話だよ。
ブラジルじゃなくたって、どこでもいい」
なのに優くんは、真剣に言う。
だから私も、優くんの真っすぐな横顔に見惚れてしまった。
「俺、バカだけど耳だけはいいからさっ!
花音の声が聞こえんの。
花音の音も。
だから、名前呼んで。
そしたら、走っていってやるよ」
そう言った優くんは、私を見つめる。
お互いの目が合った。