【完】君ノート




…………。





あれから、お父さんとはたまに電話で話すようなった。



今は学校で、優くんのくれたノートを見ている。


静かな放課後の教室に、風が入ってきてノートがめくれる。




〔花音、笑って〕


その言葉が記されてるページのところで、風はやんだ。


思わず微笑んでしまう。




私はノートを鞄の中へしまった。







そして、校舎から外へ出た。


大空を見上げる。



お母さん。


素敵な思い出をありがとう。


素敵な名前をくれて、ありがとう。



これからも、強く…笑って…幸せになるね。



花音って名前がぴったりの人間になってみせるから。




透明な風が吹いた。


私の体をそっと包む。



肌寒い季節のはずなのに、その風はすごく温かかったんだ。




この懐かしい温もりに、胸の奥が熱くなる。




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