助手席にピアス
「一度信じるって言ったんだから、今回は樋口さんのことを信じてあげれば?」
「そ、そうだよね」
「うん。ただし、同じことがもう一度起きたら、その時は納得するまで問い詰めなさいよ!」
瞳を見開き、普段より低めの声でそう言い切った美菜ちゃんは、迫力満点。その気迫に押された私は「そ、そうする」と弱気に答えるのが精一杯だった。
亮介の前では信じると、言ったくせに……。
ピアスが落ちていた言い訳をした時の、亮介の焦った態度を思い返せば返すほど自信がなくなっていく。
亮介が浮気をしたのか、していないのか……。
事実を知りたいと思っているくせに、現実から目を逸らしてしまう気弱な自分が大っ嫌い。
「美菜ちゃん……ピアスを開けたら、運命が変わるって本当かな?」
「雛子……アンタ、二十四歳にもなって、そんなこと信じているの?」
カルボナーラを食べ終わった美菜ちゃんは、あきれ顔をして私を見つめる。
「だって、もし運命が変わるなら、亮介とすぐに結婚できるかもしれないでしょ?」
「あはは! 雛子、それ本気?」
「もちろん、本気だよ」
ピアスを開けて、運命が本当に変わるのなら……。
数か月先のクリスマスイヴに、亮介からプロポーズの言葉とエンゲージリングをもらえるかもしれない。