助手席にピアス
「ねえ、奈美ちゃん……私もピアス開けようかな?」
「はぁ? なんで急にピアス?」
「うん、実はね……」
思い出深い誕生日デートを終えても、心の片隅に引っかかったままの気持ちを美菜ちゃんに打ち明けようとした時、オーダーしていたカルボナーラが運ばれてきた。
「いただきます」
鮮やかな黄色い濃厚なソースを麺にたっぷりと絡ませると、口に運ぶ。
「美菜ちゃん、おいしいね!」
「ん。おいしい」
しばらくの間、無言でパスタに舌鼓を打っていると、美菜ちゃんが話題をもとに戻した。
「で? なんでピアス?」
「あっ、そうだった。あのね……」
私は誕生日デートに出発する前に、亮介の車の助手席に片方だけのピアスが落ちていたことを説明した。もちろん、その時、亮介が口にした言い訳も、すべて。
「美菜ちゃん……亮介さ、やっぱり浮気したんだと思う?」
お皿の上にフォークを置くと、美菜ちゃんの様子をチラリとうかがう。
「樋口さんは、大学のメンバーの女のピアスだって、言ったんでしょ?」
「うん」
「それで雛子は樋口さんのその言葉を信じるって言ったんでしょ?」
「うん」
美菜ちゃんはフォークにカルボナーラを巻きつける。らせん状になったパスタは芸術的で、思わず感心してしまった。