助手席にピアス

パティシエになることは、あきらめてしまった。けれどガトー・桜に通ううちに、昔のように純粋にお菓子作りが楽しいと思えるようになっていた。

だから私を心配してくれた琥太郎に対して、素直にお礼を口にした。でも、琥太郎は少し恥ずかしかったみたい。

「べ、別に俺はなにもしてねえし……。それより、雛のクリスマスの予定は?」

照れ隠しなのか、咄嗟に話題をすり替える琥太郎がおかしかった。

「私は二十三日から二十五日まで桜田さんのお手伝い。琥太郎は彼女と過ごすんでしょ?ねえ、プレゼントは買った?」

幼なじみの琥太郎が、どんなプレゼントを用意するのかが気になって仕方ない。

「お、俺のことはどうだっていいだろ」

彼女のことを聞いた途端、言葉を濁した琥太郎の態度がおもしろくない。

真相を明らかにしたい衝動に駆られた私は、さらに食い下がった。

「いいじゃない、教えてよ! ねえ、なにを買ったの? ネックレス? それとも指輪?」

大きな声をあげると、スマートフォン越しの琥太郎の声もヒートアップする。

「ああ、もう、うるせえな。雛には関係ねえだろ! もういいや。切るぞ。じゃあな」

「あっ! ちょっと、琥太郎!」

必死の呼びかけにも応じず、呆気なく通話は切られてしまった。

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