助手席にピアス
久しぶりに琥太郎の声を聞いて胸が高鳴り、気分が上がったのも束の間……。水たまりに気づかず、片足を濡らしてしまった時のような悲しい気持ちに支配される。
きっと琥太郎は私の知らない彼女と一緒に、ケーキのクリームが溶けてしまうような熱く甘いクリスマスを過ごすんだろうな……。
顔も名前も知らない彼女のシルエットが、琥太郎の唇と重なり合う映像を思い浮かべてしまった私は、慌てて頭を振った。
幼なじみの琥太郎が、誰とどんなクリスマスイヴを過ごそうが私には関係ないはず。
それなのに、心の中にモヤモヤとした感情が渦巻いてしまうのは、どうして?
ついさっきまでは、冷たい北風も寒く感じなかったのに……。
寒さに肩をすくめると、足早に家に向かった。
“誠に勝手ながら十二月二十三日・二十四日・二十五日は予約のみの販売とさせていただきます”
クリスマスのお知らせが張り出されたガトー・桜のガラス戸の扉をそっと開ける。
今は十二月二十三日の午前七時。朝一番のバスに乗り込んでお店に来た私は、すでに店内に漂う焼き上がった生地の甘い香りに包まれながら挨拶をした。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。休みなのに朝から悪いな」
桜田さんは作業する手を休めずに、私を見る。
「いいえ。それでなにをしましょうか」
「クリームを八分立てにしてくれ」
「はい」