助手席にピアス

昨日は一日中、立ち作業をしたせいで、ふくらはぎはパンパンしているし、腰が鈍く痛んだ。

今日は十二月二十四日のクリスマスイヴ。

美菜ちゃんはきっと今頃、彼とボードを楽しんでいるだろうな。

そして琥太郎もきっと、彼女と甘いイヴを過ごしているはず……。

ケーキ作りの手伝いがなかったら、今年はすごく寂しいクリスマスイヴになるところだった。

そう思いながら、ガトー・桜の厨房でブッシュドノエルを作り続けた。けれど四回目のロールケーキ生地が焼き上がったのに、桜田さんはまた粉の計量を始めた。

「あれ? 明日の分の計量ですか?」

「いや。特別注文が入ってな」

「へえ、そうなんですか」

一日に二十個だけの限定予約販売だったはずなのに、そんなこともあるんだ……。あ、それよりも今は、作業の続きに集中しなくちゃ。

泡だて器を手に、生クリームの泡立てを始める。昨日は追われるように一日が終わった。けれど段取りを覚えた私は、今日の作業をスムーズに進めることができた。

今日の予約分二十個のケーキは無事に引き換えが終わり、残すは特別注文のケーキ一つだけ。

すると桜田さんは、店の片づけをするように指示を出した。

いつもは自分の感情を口にしない桜田さんが恥ずかしがりながらも『俺はいつだってアイツに会いたいと思っているんだ……』と車の中で本音を洩らした。

そのことを思い出すだけで、胸の奥がチクリと痛む。

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