助手席にピアス
どうして自分が、こんなに桜田さんことが気になるのか、わからない。
もしかしたら私……桜田さんに恋しちゃっているのかな?
でも、別居中とはいえ、奥さんがいる人を好きになるなんて、道理に外れているよね?
ああ、もう! 自分の本心が、わからないよ……。
モップを片手に自問自答していると、店の扉が開きドアベルがカランと鳴る。
きっと特別注文をした人が、ケーキを受け取りに来たんだ!
掃除していた手を止めると、元気よく挨拶をする。
「いらっしゃいま……え?」
挨拶が途中で止まってまったのは、思いがけない人物がガトー・桜に姿を現したから。
「よう、雛。頑張ってんな」
まるで近所でバッタリ出会ったような、軽い言葉を口にしたのは……。
「琥太郎!? どうして?」
思ってもみなかった人物の登場に、息が詰まるほど驚いてしまった。
「どうしてって、ケーキを買いに来た」
「じゃあ、特別注文したのって琥太郎なの?」
「まあな」
久しぶりに会った琥太郎は、はにかんだ表情を浮かべながら何故か耳を赤くしている。私にはクリスマスイヴの夜に、琥太郎がどうしてこんな場所に姿を現したのか意味がわからなかった。
「琥太郎、今日はイヴだよ? 彼女と過ごさなくていいの?」
「雛さ……この前から彼女彼女ってうるせえよ」