助手席にピアス

会計を済ませた琥太郎に手首を掴まれる。引っ張られるように連れて行かれたのは店の外。

今まで暖房の効いた店内から急に外に出た私は、その寒暖の差にブルッと身震いをした。すると寒さに震える私を包み込むように、琥太郎の匂いがする大きなモッズコートを肩からかけられる。

「あ、ありがとう」

「いや……あのさ、雛。俺が桜田さんに無理を言ってケーキを注文したのは、雛とふたりでこのケーキを食うためだから」

ケーキが入った箱を掲げた琥太郎は、白い息を吐き出しながら笑う。

「私と……ふたりで?」

「ああ。だってクリスマスイヴは女の子にとって特別な日なんだろ? そんな日に雛をひとりで過ごさせるわけにはいかないだろ」

幼なじみの琥太郎とは、何度か一緒にクリスマスパーティーをして過ごしたことはあった。でもそれは、ふたりきりというシチュエーションではなく、私と琥太郎の間には、朔ちゃんや家族や友達といったように、いつも誰かがいた。

クリスマスイヴは特別な日……。

幼なじみの琥太郎がふたりきりで過ごしたら、いったいどんな特別な日になるの?

三日月と星が見守る暗がりの中、私と琥太郎は無言のまま、しばらく見つめ合う。その時、私を温かく包み込んでくれていた琥太郎のモッズコートから機械音が鳴り響いた。

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