助手席にピアス

「気安くなんて言ってないもん! 琥太郎の鈍感! バカ!」

「はあ? 世界一の鈍感女に鈍感なんて言われる筋合いねえし!」

折角、自分の本当に気持ちを自覚したのに……。

私の思いにちっとも気づいてくれない琥太郎に対して、苛立ちを感じた。

でも、この前とは打って変わって、いつものように思ったことを言い合える関係に戻れたことに、ホッと胸を撫で下ろす。

「琥太郎、言いすぎた。ごめんね」

「まあ、俺も。ごめん。でも雛、本当に具合が悪いんじゃないんだな?」

「うん。大丈夫」

「そうか。あんまり驚かすなよ」

「うん。ごめん」

琥太郎の優しい声を聞くと、また胸が苦しくなる。

でも、告白してくれた琥太郎の思いを拒否したのは私自身。そのことを後悔しながら、込み上げてくる涙が零れ落ちないように下唇を噛みしめた。



朔ちゃんと莉緒さんの結婚式の招待状を受け取り、ウエディングケーキと当日の準備工程が決まり、順風満帆なはずなのに……。

私の心は、どんよりと曇ったまま。その原因は、もちろん琥太郎への思いを自覚してしまったから。

イタリアンレストラン・ボーノの本日のオススメである、たらことイカのパスタが運ばれてきても、すぐに食べる気にはなれなかった。

「雛子、どうかした?」

「……美菜ちゃんはバレンタインのチョコは手作りするの?」

パスタをおいしそうに頬張る美菜ちゃんに聞く。

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