助手席にピアス

「まっさかぁ!そんな面倒なことしないよ」

「そっか」

「雛子は毎年、チョコを手作りしているんだよね。今年は相手がパティシエの桜田さんだから大変だね」

二週間後に控えたバレンタインデーの話をしたのは、美菜ちゃんが彼氏にどんなチョコレートを贈るのか気になったから。

でも思いがけず桜田さんの話になってしまい、心がチクリと痛み出す。

そんな私の思いを知ってか、知らずか……。美菜ちゃんは、桜田さんの話題を続ける。

「ねえ、雛子。桜田さんに別居している奥さんのこと、聞いたの?」

「ううん。まだ」

彼に奥さんのことを聞けずにいる理由は、自分が不倫をしていることを認めたくないから……。

首を横に振る私の様子を見かねた美菜ちゃんはパスタを食べている手を休めると真剣な表情を浮かべた。

「雛子に不倫は似合わないよ。桜田さんとこの先もずっと付き合うつもりなら、ハッキリさせた方がいいと思う」

たった一つしか歳が違わないのに、しっかりしている美菜ちゃんに頭が上がらない。

「うん。美菜ちゃん、心配かけてごめんね」

「ううん。私はいつだって雛子の味方だよ。さ、パスタが冷めないうちに食べちゃお。ね?」

「うん」

私のことを心から心配してくれる美菜ちゃんに感謝をしながら、このまま桜田さんのことをうやむやにするわけにはいかない、と覚悟を決めた。

< 162 / 249 >

この作品をシェア

pagetop