助手席にピアス

「もちろん、わかっているけど……」

もしかして雨が降るかもしれないから、折り畳みの傘が必要でしょ。それに、もしかして買ったばかりのシフォンワンピースにジュースを零してしまうかもしれないから、余分に代えの洋服もあった方がいいよね。

いつ、どんなことになっても慌てないように、とアレコレ用意していたら、あれよあれよと荷物が多くなってしまったのだ。

たった一泊の旅行なのに、あんなに大きな荷物になちゃって、亮介にあきれられちゃったかな……。

出発する前から気落ちしてしまい肩を落とす。すると亮介がキャリーケースを軽々と持ち上げると、あっという間に車のトランクに収めた。

「雛子、気合が入っているな」

亮介は笑顔を見せながら、大きな手で私の頭をポンポンと軽く叩く。今日の晴れの天気にも負けないほどまぶしい亮介の笑顔を見た途端、不安が吹き飛び、自然と頬が緩んでしまう私は単純だ。

「だって、ずっと前から今日を楽しみにしていたんだもん」

「俺も楽しみにしていたよ。さあ、出発しようか」

「うん」

待ちに待った旅行が、ようやく始まる。

陽気なサンバのリズムに乗って踊り出したいようなワクワクする気持ちを抱えて足を進めると、助手席のドアを開ける。

その時、それは突然、太陽の日差しを受けてキラリと光った。

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