助手席にピアス

う~ん、と頭をひねっていると、事務所の窓の外に見える橙色の実が目に留まった。それほど高くない木には、緑の葉っぱとともに、この時期が旬の甘夏がたわわに実っている。

ほんのりと苦みがある甘夏の味を思い出した私は、あるスイーツが思い浮かんだ。

「タルトを作りたいです。今なら甘夏のタルトを作ります。旬のフルーツを使えば色んなバリエーションのタルトが作れるし、ベースをカスタードクリームやアーモンドクリーム、それからクリームチーズと変化させれば、また違った風味のタルトが作れると思います」

桃やイチジク、チェリーにブドウなどの色鮮やかなタルトもいいよね……。

蕾だった花が一気に開花するように、私の頭の中はタルトで満開になる。

あっ、今は面接中だった!

ハッと我に返ると、背筋を伸ばす。

「なるほど、いいアイデアだわ。そうね。青山さんには厨房と店頭の接客と両方をお願いすることになると思うわ」

オーナーは柔らかく目を細める。

「え? それじゃあ?」

「ええ、採用よ。これからよろしくね」

「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします」

まさか、この場ですぐに合否の結果が出ると思っていなかった私は、驚きと喜びが入り混じった感情に包まれながら、頭を下げた。

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