助手席にピアス
二十四年間も幼なじみをしてきて、琥太郎に対して初めて口にした感情に感極まった私の瞳から、涙がポロポロと零れ出す。
「馬鹿だな。ピアスになんか頼らなくてよかったのに」
ユラユラと視界が揺れても、琥太郎が優しい瞳で私を見つめていることだけはわかる。
「琥太郎……」
琥太郎は私に向かって長い手を伸ばすと、頬に伝う涙を指でそっと掬い上げてくれた。
「運命が変わったのは俺の方だよ。雛、好きだぜ」
時に笑い、時に泣き、時に励まし合い、時にケンカもした……。
物心ついた時から、同じ時代(とき)を共に成長した琥太郎とは、数えきれないほど会話を交わしてきた。けれど、こんなに甘く言葉を囁かれたのは初めてで、心と身体がとろけるように熱く火照った。
お互いの気持ちが通じ合った今、ふたりを邪魔するものはもうなにもない。だから、私はエレベーターの続きをして欲しくてゆっくりと瞳を閉じる。
唇に落とされたのは、さっきの言葉と同じくらい甘くて優しい琥太郎のくちづけ。
琥太郎との初めてのキスは、ほんのり涙味……。
その喜びに浸っていた私は、唇を熱く重ねたままベッドに押し倒される。
耳たぶがジンジンと火照るのはピアスを開けたせいなのか、それとも琥太郎の甘い言葉とキスのせいなのか、わからないまま……。
琥太郎にすべてを捧げるために、瞳を閉じた。