助手席にピアス
「え~! 別れたぁ!? しかもフラれたって、どういうこと?」
おなじみのイタリアンレストラン・ボーノに美菜ちゃんの大きな声が響き渡る。
「美菜ちゃん! 声が大きいから!」
「あ、ごめん。でも、あの例のピアスの持ち主が白石さんだったなんて、ビックリだよ」
私が実家に帰っている間に、亮介が白石あゆみさんと会っていたことや、亮介から別れを告げられたことなど、すべてを美菜ちゃんに打ち明けた。
「でね、もう嫌になっちゃって、田舎に帰って、いい人見つけて、適当に結婚するって言ったら、怒っちゃってさ……」
「誰が?」
「だから、琥太郎が……」
幼なじみの琥太郎のことも、初恋の人が朔ちゃんだったことも、数少ない友人である美菜ちゃんには、大体のことは話してある。その安心感から、つい、琥太郎に対する愚痴を零してしまった。
「あのさ。雛子?」
「なに?」
「雛子は樋口さんと別れたことよりも、幼なじみの琥太郎くんのことが気になって仕方ないように見えるなぁ」
美菜ちゃんは、本日のオススメのモッツアレラチーズとトマトのパスタを、ぽってりとした口に運びながらニヤニヤする。