助手席にピアス
「美菜ちゃん、確かに私は琥太郎のことが気になるよ。でもそれは、なんで琥太郎が怒ったのか、理由がよくわからないからであって……」
「はい、はい。わかりました。そういうことにしておいてあげる。で? 琥太郎くんはなんて言って怒ったの?」
パスタを巻きつけていたフォークをお皿に置くと、ドリンクで喉を潤す。そして実家で琥太郎から言われた言葉を、頭の中で整理した。
「なんか、私が上京するのは、本当は反対だったとか」
「うん、うん。それから?」
「少しは俺の気持ちに気づけって……それで私のことを鈍感って言った」
今思い出しても、腹が立つ!
イライラする気持ちを発散するように、大きな口を開けると思い切りパスタを頬張った。
「鈍感ね。確かに雛子は鈍感だ」
美菜ちゃんは私の目の前で、おもしろそうにケラケラと笑った。なにがそんなにおもしろいのか、ちっともわかない。
いつもなら、あっという間に平らげてしまうパスタも、今日は半分しか喉を通らなかった。
これも失恋のせいだ……。
憂鬱な気持ちのままランチを終えると、トボトボと会社に戻った。