助手席にピアス
朔ちゃんが食事に連れてきてくれたのは、東京プリマホテルの十五階にある鉄板焼きのお店。
待ち合わせ場所に東京プリマホテルを指定してきた、朔ちゃんの意図がわからなかった私は、もしかして食事をしてからバーでカクテルとか飲んで、そして、そして……きゃぁ~!と、ひとりで盛り上がっていた。
でも話を聞けば、この東京プリマホテルで結婚式を挙げるらしい。今日はその打ち合わせに莉緒さんと訪れていたということだった。
『僕とデートしない?』なんて、紛らわしい誘い方をした朔ちゃんを、ちょっとだけ恨めしく思った。
こうなったら、もう無理ってほど、たくさん食べてやるんだから!と意気込んだ。
顔が映りこむほど磨き上げられた鉄板の上で焼かれる、魚介や霜降りの和牛がとてもおいしそう。そして目の前で披露されるシェフの見事な手さばきに、テンションが上がる。
「朔ちゃん! 今の見た? すごいよね!」
「ああ。これを雛子ちゃんに見せたら、きっと喜んでくれると思ったんだ」
朔ちゃんと莉緒さんに同時に笑われた私は、乗り出していた身体をゆっくりともとに戻しながら、自分の子供っぽい行動を反省した。
これじゃあ、朔ちゃんにオレンジジュースを勝手にオーダーされても文句は言えないよ……。