猫に恋する、わたし

「誰が自業自得ヤローだって?」


その声に振り向くと、いつからいたのか隣のクラスの宮川智充(さとる)が立っていた。

一見、真面目な優等生に見えるけれど、実は中学時代にかけてかなりヤンチャだったことは地元でも有名で、耳たぶに複数のピアスホールが残っていたりと昔の名残が今もちらほらとある。


「えっちょっと待って。智充君もそうなの?初耳なんだけど」

「ああ彼はまた別格」

「別格って?」わたしは首を傾げた。

「つか何の話してんの」


間に割り込んできた智充君に、菜々緒はシッシッと手で追い払うようにして冷たくあしらう。


「秘密。第一あんた、クラス隣でしょ。何の用?」

「べー。別に上崎に用はねえし。俺が用があるのはこっち!」


そういって智充君はわたしが座っている椅子を引いて、自分の方へ向けた。

いきなりだったから、わたしは食べていたポッキーがのどにつまってむせてしまう。


「はいはい、仲のよろしゅうことで」


菜々緒がその場を離れると、智充君と目が合った。

なんだか近い。


「よっ。おとといだっけ、メール付き合ってくれてありがとな」


メールの内容はたわいもたい話。

智充君とは一年生の時のクラスメイトで隣席だったこともあり、意気投合した。

今はクラスが離れてなかなか会えないけど時々こうして遊びに来てくれたり、週に一度はメールのやりとりを交わしてる。
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