猫に恋する、わたし
上級生だろうか。
女の子、というよりも女の人っていったほうがふさわしい。
見たことのないきれいな女の人が突如現れて、彼のフードを下ろすとわっと驚かす。
それから嬉しそうに腕を組んでぴったりとくっついた。
何を話しているんだろう。
お互いにヒソヒソと耳元で囁き合ってはまた笑って、そんな彼らを周りがはやしたてる。
中には「お似合い」なんて声もあって。
ぐるぐる。またヤツがやってきた。
ココロの中を走り回る寄生虫がわたしの弱いところを探してる。
「羽生伊織が気になる?」
えっ、とわたしは智充君に目をやった。
智充君は目元を釣り上げ、口を真一文字にしていった。
「莉子、こーんな怖い顔してるよ」
顔が真っ赤になるのが分かった。
たぶん、智充君はわたしの気持ちに気が付いてる。
「そ、そんなんじゃないよ…」
わたしは慌てて火照った顔を下敷きで隠した。
「ねえわたしに用があったんじゃないの?」
ああ、と智充君は思い出したように手を叩いた。