猫に恋する、わたし




ブッブー。




ああ、そっか。

彼のことよく知っていたつもりだったけど、わたしもまだまだだな。

昼間、彼がわたしを睨んでいたのは、「見るな」というわたしに対する威嚇だとは思っていた。

でも「見るな」じゃなくて、「見てんじゃねえよ、ブス」か。

、、
「ブス」が足りなかった。






「ずっと俺のこと、ちらちらと見ててうざいしキモいし。あんたあれだろ。俺のストーカーだろ。いい加減にしねえと訴えてやっからな」


彼は廊下に出てキョロキョロと誰もいないのを確かめ、席に戻ると制服の内ポケットに隠し持っていたタバコを取り出して火をつけた。

彼に出会ってから、136本目。なんて数えちゃってるわたし。

本当にキモいかも。



「伊織君。ここ禁煙だよ。それに未成年」


彼に注意するのも、136回目。

でも彼は何も聞こえていないふりをして煙を吐き出す。

わたしも注意しつつも、実はタバコをやめてほしくなかったり。

うつむき加減にタバコをくわえているところがとても色っぽくて、まるでカメラのシャッターを押すがの如く、その姿を脳裏に焼きつけてわたしの中のアルバムにストックするのが密かな趣味だったりする。
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