嗤うケダモノ


日向は爆走していた。

風のように。
いや、嵐のように。

見咎め、注意してくる先生に、丁寧に頭を下げて謝罪して。
(↑嘘
 完全にスルーしてた)

用具を片付けていた野球部員に 丁寧に頭を下げてバットを一本拝借して。
(↑嘘
 足蹴にして奪い取ってた)

なにはともあれ、日向は爆走していた。

今回も新記録間違いなしデス。
オメデトウ。

目指すは柔道部の用具入れ。
目的は愛しのケダモノの救出。

空狐のオジーチャンの話は、なんだかんだで2割も聞いてない。

『心配ナイ』
とか言ってた気もするが、そんなワケねーよ。

心配なコト山の如しデスYO!

だって相手は、本当はケガなんてしていない現役バリバリの柔道部員なのだ。

敵うハズがない。

そりゃ先輩だって、ギュってされると見た目より逞しいコトがわかるケド。

それでも敵うハズがない。

傷ついて横たわるケダモノのビジョンが日向の脳裏をよぎる。


(そんなの… 絶対に許さん!)


待っていて。
ハニートラップでもなんでも発動させて、直接対決だけは回避していて。

木崎日向、今すぐ馳せ参じ、助太刀いたす!
(↑出たよ、武士)

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