嗤うケダモノ
肆
日向は爆走していた。
風のように。
いや、嵐のように。
見咎め、注意してくる先生に、丁寧に頭を下げて謝罪して。
(↑嘘
完全にスルーしてた)
用具を片付けていた野球部員に 丁寧に頭を下げてバットを一本拝借して。
(↑嘘
足蹴にして奪い取ってた)
なにはともあれ、日向は爆走していた。
今回も新記録間違いなしデス。
オメデトウ。
目指すは柔道部の用具入れ。
目的は愛しのケダモノの救出。
空狐のオジーチャンの話は、なんだかんだで2割も聞いてない。
『心配ナイ』
とか言ってた気もするが、そんなワケねーよ。
心配なコト山の如しデスYO!
だって相手は、本当はケガなんてしていない現役バリバリの柔道部員なのだ。
敵うハズがない。
そりゃ先輩だって、ギュってされると見た目より逞しいコトがわかるケド。
それでも敵うハズがない。
傷ついて横たわるケダモノのビジョンが日向の脳裏をよぎる。
(そんなの… 絶対に許さん!)
待っていて。
ハニートラップでもなんでも発動させて、直接対決だけは回避していて。
木崎日向、今すぐ馳せ参じ、助太刀いたす!
(↑出たよ、武士)