嗤うケダモノ

「…
電話してくる。」


メガネの位置を直した樹が、溜め息を吐きつつ立ち上がる。


「…
待って。
私もコレ返してくるわ。」


由仁の胸から日向を引き剥がしてパッドを毟り取った百合も、溜め息を吐きつつAEDを抱えて立ち上がる。


「ありがとー、命の恩人S。
今度ポテチ奢るからー。」


再び日向を抱き寄せた由仁が、笑顔でヒラヒラ片手を振る。



軽いな、命。
パリっパリだな。

頭の悪さが際立つ由仁の声に見送られて樹と百合が出ていくと 部室の中は二人キリ。

さー、日向サン?
ナニカ言うコトあるンでショ?


「…せせせ先輩…//
あの…
ありがとうございました…」


由仁の腕の中で真っ赤になった日向が、俯きながら言った。

そーそー。
お礼は大事だネ。

でも、他にもあンでショ?


「あの… あの…//」


「いーの。
ヒナが無事なら。
あれ? 空狐のジーチャンは?」


艶然と微笑んでから、由仁は辺りを見回した。

< 306 / 498 >

この作品をシェア

pagetop