嗤うケダモノ
隣の客室の前で待っていると、ノースリーブのマキシワンピという軽装の日向がひょっこり顔を出す。
山の朝は、そんなカッコじゃ寒いよ?
由仁はVネックのTシャツの上に着ていたパーカーを脱いで、彼女の華奢な肩に羽織らせた。
瞬く間に色づく頬。
モゴモゴとお礼を紡ぐふっくらした唇。
オイシソーすぎデス、バニーちゃん。
もう食べずにはいられマセン。
さぁ、人気のない場所に行きましょーネー?
涎を垂れ流すケダモノを笑顔の裏に隠した由仁は、愛しい獲物の手を引いて歩き出した。
着いたトコロは旅館の庭園。
さらにその一角の、色とりどりの花が咲き乱れる、さながら植物園のようなスペース。
昨日ロビーに入った時、壁一面の大きな窓から見えてたンだよネ。
「わー… キレー…」
瞳をキラキラさせて呟く日向を、由仁は花なんかそっちのけで眺めた。
うん、激しく同意。
スゴく綺麗だ。
花じゃなくて、君が、ネ。
喜んでくれるのは嬉しいンだケド…
ちょっと嫉妬しちゃうナー。
コッチも見てよ。
その澄んだ瞳に、俺を映してよ。
由仁はウットリと花々に見惚れる日向の腰を抱き、ある方向へ誘った。