嗤うケダモノ

由仁は日向の腰を抱き寄せ、長い指で彼女の顎を掬い上げた。

唇で、額に触れて。
瞼に触れて。
頬に触れて。

唇に、触れて。

もっと深く。

深く‥‥‥







なんか視線を感じマスケド?

ガン見レベルの熱視線デスケド?

全っ然、集中デキマセンケド───?!


(もー…
いったいなんなの?)


由仁は日向を抱きしめたまま顔を上げ、視線の出所辺りを睨みつけた。

男がいる。

上下スウェットというラフな格好をした、やたら細い男が。

そういえば昨日も、ココの旦那にガン見されたっけ。

失礼な旅館だな、おい。

でも、昨日の孝司郎の様子とは全く違う。

なんつーか…
満面に歓喜の色を浮かべて…


「戻ってきてくれたンだね!!」


よく通る高めの声で叫んだガン見男は、驚く由仁と日向目掛けて駆け寄ってきた。

しかも、両腕を広げてやがりマスYO!

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