嗤うケダモノ
なんなの?まじで。
ナニする気?
日向を素早く背後に隠した由仁は、迫り来るガン見男と対峙した。
ぅわ。
来る、来る。
グイグイ来る。
由仁は腕を伸ばして男の顔面にアイアンクローをかけ、その突進を阻んだ。
けれど男は止まらない。
掌を頭で押し返しながら両手を振り回し、由仁に掴みかかろうとする。
「戻ってきたンだね!
やっと戻ってきたンだね!」
「ちょ… ダレが?ドコに?
てか、俺?
人違いしてナーイ?」
「向こうに行こう!
二人キリになろう!
君の好きな夾竹桃がたくさん咲いたよ!」
「待って、待って。
人の話、聞いてるー?
行かないし、ヤローと二人キリとか真っ平ゴメンだしー。」
「もう待てない。
これ以上待てない。
好きだ!好きなんだ!
愛しているンだ───!!」
「きゃー?!
ナニコレ?!
わりと本気でコワい───?!」
顔をホールドされたガン見男の絶叫告白に、由仁は心霊絡みではない恐怖体験を味わった。
日向も、由仁のTシャツの裾を握りしめて固まっていた。