嗤うケダモノ
「ねー?
あの人、ココの旦那の息子サンの、清司郎サンなのー?」
「あ… ハイ。
若旦那はこの庭園の植物の世話をしていて…」
失態を咎められるのかとビクビクしていた年配の仲居は、由仁の笑顔に引き込まれるように饒舌に語り始めた。
「身体が弱くて、普段は大人しい人なンですよ。
その… 今朝はアレでしたケド…」
身体が弱いってか…
頭がヤバそーでしたケド?
そんな内心の毒を隠して、由仁はナニ食わぬ顔で質問を続ける。
「ふーん?
幾つなのー?」
「お若く見えますケド、34です。」
「「34?」」
驚愕の声が二つ重なり、その声の持ち主である由仁と日向は顔を見合わせた。
とてもそんな年には見えなかった。
いや、進撃状態だったから、容姿をシッカリ認識したワケではないが。
醸し出される雰囲気が、幼いというか、未熟というか…
確実に、年齢相応ではなかった。
なるほど、本格的に心を病んだ人なのだ。
いつからなのだろう?
そして、ナニが原因なのだろう?