嗤うケダモノ

杏子が感じた
『横溝正史の小説にありそうな、田舎の封建的なアレ』
は、あれから18年を経た今でも健在だった。

長様(笑)のお言いつけなら、もうこの年配の仲居から情報を引き出すことはできないだろう。



なーんちゃって。
諦めると思った?


「そーなのー?
でも… 教えてほしーナー?」


軽く首を傾げた由仁は、仲居の手をそっと取った。


「く… 久我様?//」


「あんな風に人違いされちゃったら、気になるナー?
他のダレかに今のコト喋って、聞いちゃうカモ知れないナー?」


「そんな…」


「アナタが教えてくれたらナー?
ダレにも喋らないし、アナタに迷惑かけずに済むのにナー…」


皺深い手の甲を親指で優しく撫でて。
目をジっと見つめて。
持ち上げた口角に、色気と威圧を漂わせて…


「ね? オネガイ☆」


「っ?!// ハイっ!///」


…ナニ?
その、脅迫と色仕掛けの合わせ技。

巧みすぎンだろ。

日向はオトメのように頬を染めて何度も頷く年配の仲居を、気の毒そうに見つめた。

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