嗤うケダモノ

なにはともあれ
長様(笑) <<< ペガサス(笑)
と、相成りましたワケでして。

って、ヤな不等式デスケドネ?!

とにかくその年配の仲居は、由仁に熱い眼差しを注ぎながら話しはじめた。

そりゃもうペラペラと、ネ。

清司郎と、青沼家の遠縁である瑞穂は、幼馴染みで、同級生で、ついでに許嫁という仲だった。

よくある、親同士が勝手に決めた縁談ではあったが、話は順調に進むものだと周囲は思っていた。

彼らは幼い頃から、兄妹のように、親友のように、いつも仲睦まじく二人一緒にいたから。

おそらく、お互いがお互いに、淡い恋心を抱いていたのだろう。

そんな二人の関係が変わったのは、高校に進学したばかりの桜が咲き誇る季節だった。

正確には、変わったのは清司郎。

彼は別の恋に落ちた。

相手は、当時は小規模だった宿に出入りしていた、リネンクリーニング業者の宅配を担当する女性だった。

名は、川村 千鶴子(カワムラ チヅコ)。
年は、二十歳。

彼女は地方の名家出身の清司郎とは真逆の、貧しい母子家庭育ちだった。

唯一の肉親である母親を病気で亡くしながらも明るさを失わず、健気で溌剌とした美しい千鶴子に、清司郎は瞬く間に傾倒していった。

口を開けば、千鶴子、千鶴子。
寝ても覚めても、千鶴子、千鶴子。

周囲は困惑した。
瑞穂は泣いた。

孝司郎は… 全力で反対した。

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