嗤うケダモノ

拾肆


「寂しーナー、寂しーナー…」


「え?
名残惜しいンですか?
里帰り気分だったンですか?」


「んーん。
ヒナとのバカンスが終わるから。
寂しーナー、寂しーナー…」


「…ソコ?」


由仁は歩く。
肩を落として。

日向も歩く。
呆れ顔で。

蝉の声が穏やかなハーモニーを奏でる、バス停までの道程を。

帰りは二人だ。
杏子はいない。

千鶴子の供養、今後の動向が不明瞭な瑠璃子のアフターケア、後藤の妻への上書き暗示…
その他諸々の事後処理を行うため、杏子はもうしばらくココに留まることになった。

もちろん孝司郎に構ってやるつもりはナイが。
むしろ、枯れればイイのにと思っているが。

『タダ働きだよ
全く、やってらンないよ』

なんてボヤいていた杏子だったが、その表情はどこか晴れやかだった。

18年前の後悔や心残りが、少しは払拭されたのだろう。

源翁庵は…

上を下への大騒ぎ
周章狼狽
てんやわんや

なんかそんなカンジ。

しょーがないヨネー?
主人二人が、同時に廃人化したからネー?

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