嗤うケダモノ
「赤子だった由仁と、杏子ちゃんがおったというワケなんじゃ。」
空狐はいつものように、カッカッカと笑った。
だがその独特の笑い声は、今はなんだか乾いている。
己のしたかったコトと、してしまったコトとのギャップに、九尾は苦しんだに違いない。
そして九尾の親だという空狐も、同じ苦しみを味わってきたに違いない。
人にとっては永遠とも思えるような長い時間、ずっと。
「じゃ、今度こそ大成功っスね。」
日向はニコリと笑った。
断られたにも関わらず、アイスコーヒーを注いだ小振りなグラスを、空狐に差し出しながら。
面食らいながらもソレを受け取った空狐が、不思議そうに首を捻る。
「ナニが大成功したンじゃ?」
「だって先輩、幸せそーだし。
思いっきり本能の赴くまま、自由気ままに生きてるし。」
肩を竦めて苦笑しながら、日向は言葉を続ける。
「だから九尾も、もう幸せがどんなだか知ってますよ。
だって先輩は九尾で、九尾は先輩なんでショ?」
「…
なるほど、のぉ。」
手にしたグラスに視線を落とし、空狐は小さく呟いた。