嗤うケダモノ

変わった話なんて、何も聞いてなかった。
昨日電話した時も普通だった。

なのに玄関に立つ日向を見た途端、アキの様子は一変した。

細めた目を吊り上げて。
裂けたんじゃないかと心配になるくらい、口角を持ち上げて。

『ニオウ… ニオウ…』
なんて、片言で呟いて…

ナニコレ?

アキの声、いつもと違くない?
その顔、アキじゃないってか、人間の域を超えてない?

思わずアキに向かって伸ばした日向の手は、強い力で払い退けられた。

そのまま突き飛ばされ、押さえつけられる。

部屋の奥から出てきたアキとそっくりの人間離れした顔の両親まで加わり、寄ってたかって持ち上げられて…


『今、アキの部屋に閉じ込められてます…』


レシーバーの向こうで、日向が溜め息混じりに言った。

そりゃ、ビビるよネ。

悄然と肩を落としてたりして。
目に涙を浮かべてたりして。

丸い尻尾が、プルプル震えてたりして…

だが、可愛いウサギちゃんを妄想して頬を緩ませた由仁の耳に飛び込んできたのは、語気を荒げた日向の声だった。


『でも、違いますから!
私、昨日ニンニクなんて食べてませんから!
隔離されなきゃなンないほど、公害レベルの体臭でもないデスから!!』

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