嗤うケダモノ

ビっっ

布が切り裂かれるような鋭い音が聞こえて、視界が白に染まった。

その向こうから伸びてきたモノが『手』だと気づいた時には既に…


「ぐぅ ぅ…」


由仁は首を絞められていた。

苦痛に顔を歪めながら、そっと片目を開く。

『手』の正体は… アキだ。

女の細腕。
しかも片手。

なのに振り払えない。

ますます圧迫される頸部。
宙に浮く四肢。

こりゃ、完全にミスった。
ちょっと考えればわかるコトだったのに。

相手は、触れるコトなく椅子を吹っ飛ばし、耐荷重量が1トン近い強度のザイルをブチ切る奴らなのだ。
そりゃ布団の爆破くらい、チョロいよネー。

由仁はかろうじて眼球だけを動かし、辺りを見た。

部屋を舞う白い羽。
ナニが気に入らないのか、その羽を振り払っているアキの両親もどき。

その向こうに、泣きそうな顔でナニカを叫んでいる日向…


(あ… コレ、イイカンジ…)


扉に一番近いのは、彼女だ。

アキは絞殺に夢中。
両親は羽毛に夢中。

今なら‥‥‥

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