嗤うケダモノ
でもね?
間違いなく、間違いなンだよ?
「アキ!
イイ加減にしとけよっ!」
セリフだけは威勢よく、駆け寄ってきた日向はクッションでアキをボフボフ叩いた。
「先輩放せよ!
フルボッコにして、洗濯竿に吊るすゾ、コラァ!」
そんなコト、出来ないクセに。
君の心情的に。
もちろん物理的にも不可能だ。
アキもどきはクッション攻撃などものともせずに、由仁の首を絞め続ける。
だがとうとう、間違いは最悪の結果を迎えてしまう…
ボフっ!
日向の渾身の一撃が、アキもどきの顔面にヒットした。
サスガに煩わしかったのか、それとも怒らせてしまったのか…
吊り上がった目を見開いたアキもどきは、固い動きで首を回して日向に顔を向けた。
同時に緩む、手の力。
アキもどきの足元に崩れ落ちた由仁は、久し振りに肺を満たした空気に激しくむせた。
「アキ… しっかりしろよ…
私がわかンねーの?」
胸が締めつけられるほどの、痛ましい囁き。
由仁が片手で喉を押さえながら仰ぎ見ると、日向は涙を浮かべた瞳でアキもどきを睨みつけていた。