嗤うケダモノ

人間の限界を超えた、凶暴で凶悪なあの力…

あんなモノを向けられたら、日向など一溜まりもないだろう。


(なんとかしなきゃ…
なんとか…)


なんとかなるとは、思えマセンケドネ?!

自分の悪足掻きっぷりに内心可笑しくなりながら、由仁はもう片方の手もアキもどきの足に伸ばした。

転んでくれたり、しねーカナ?

だが、そんなささやかな願いすら、アッサリ断ち切られてしまう。

羽を追うのに飽きた両親もどきが、二人掛かりで由仁を押さえつけたのだ。

背を踏まれる。
腕を捩り上げられる。

アキもどきの足を掴んでいた手も、簡単に外されて…


「いやぁっ! 先輩!
アキ! やめさせて! アキ!!」


(まーた、人のコトばっか…)


悲鳴を上げる日向を、由仁は血走った目で見上げた。

全く、困った人だ。

泣いて、叫んで、逃げればイイのに。

全く、可愛い人だ。

いつ零れ落ちてもおかしくないほどの涙を、気丈に堪えて。

あぁ…

駆け寄って来ようとする可愛い人の細く白い首筋に、凶々しい指先が迫る…

< 86 / 498 >

この作品をシェア

pagetop