嗤うケダモノ
色々と見当違いだったみたい。
でも、ほんとに心当たりないンだもん。
怒られても困るしー。
五影でも守護霊でもない黄門様の前にしゃがみこんだ由仁は、不服そうに唇を尖らせた。
「じゃ、ドチラサマー?
ジーチャン、俺の中にいたの?
俺のコト知ってンの?」
「‥‥‥由仁…か? 本当に?
おぬし、九尾はどうした?」
「知らねーし。
九尾ってダレ?
てか、ジーチャンがダレ?」
「まさか… 消えた?
では儂が後生大事に抱えとったのは、アヤツの妖力だけ…?」
もしもーし。
会話しよーよー。
ナンナノ?この人。
聞こえてないの?
意味が通じないの?
時代劇風に語尾に『ござる』でもつけたら、お話してくれンの?
顎髭を引っ張りながら考え込む黄門様を、由仁は半眼で睨みつけた。
すると、視線に気づいた黄門様が顔を上げる。
「よし。帰るぞ、由仁。
兎にも角にも杏子ちゃんに報告せんと。」
…マイペースにも程だろ。
由仁はちょこちょこ歩き出した黄門様の襟首をつまんで持ち上げた。