【完】白衣とお菓子といたずらと
「お風呂ありがとうございました。ドライヤーとかってある?」


俺が自分の欲望と戦っているなんて知らない彼女は、呑気に尋ねてきた。


きっとお風呂でリラックスしてきたんだろう。


さっきまで彼女の方が緊張していたというのに、先ほどのまでの様子は垣間見えない。


「……」


「礼央さん?」


どうしたものかと悩んでいたため、彼女に応えないといけないと頭では分かっているものの、答えられないでいた。


まだまだ俺と距離がある場所で足を止め、タオルを今度は肩に掛けた状態で、不思議そうに首を横に傾けている。


またチラリと見えた首元から、目を逸らしながら慌てて、彼女から聞かれたことを思い出した。


「……ごめん、ドライヤーだったね。ちょっと待って、あったはずだから」


少し髪が長かった時期に使っていたものがあったはずだ。


どこにしまったのか思い出す事が自分の思考を誤魔化すのに調度よかった。急いでドライヤーを引っ張り出すために脱衣所へと向かった。
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