【完】白衣とお菓子といたずらと
「よし、これ位でいい?」


乾き具合を確認する俺の問いかけに、彼女は右手で髪を梳きサラサラと髪をなびかせた。


「うん、大丈夫。……ありがとう」


「俺がしたかっただけだから。お礼を言われることじゃないよ」


今の状況を楽しんでいる俺と違って、美沙はどこか表情を曇らせていた。笑ってはいるけれど、心からじゃないような気がした。


俺、何か余計なことしたか?


自分の言動を思い返してみるも、とくに思い当たらない。俺がドライヤーを奪ったくらいでは彼女はこんな反応しないはずだ。特に理由は無いけれど、そう思った。


「美沙、どうしたの?浮かない顔して」


「……」


話しかけるも、考え込むような難しい顔をしたまま返事が返ってこない。


「美沙?」


「……なんだか………」


「ん?」


何か話そうとしたのに、言葉を切ってしまった。彼女は何が言いたいんだろうか。


予想がつかなくて、困ってしまった。だから、彼女の次の言葉を待つしかなかった。


申し訳ないけれど、教えてもらわない限り、俺には分かりそうにない。


「だって、なんか手馴れてるというか……礼央さんずっと1人暮らしって言ってたのに、当たり前にドライヤーもあるし……」


最後の方はやっとで聞き取れるくらいの小さな声だった。


でも、彼女の表情の理由を考えるのには、十分な情報量だった。


もしかしたら彼女は……嫉妬してくれている?


俺の勘違いではない気がする。


「言っておくけど、あれは俺のだよ。最近使ってなかったから、仕舞ってあっただけだから」


俺の言葉に、彼女は分かりやすく驚いた顔をした。


やっぱり何か勘違いしているらしい。
< 149 / 220 >

この作品をシェア

pagetop