【完】白衣とお菓子といたずらと
「だって可愛いなと思って。それに、ここに凄く馴染んでくれてることが嬉しくてさ」


「……///」


なんと答えればいいか分からなくなると、中途半端に動揺したりもせず、無視を貫き通す辺りも可愛いと思う。


俯いているけれど、顔が真っ赤なのが見えている。


これ以上からかうと機嫌が悪くなるということも、ここ2週間ほどで学んだ。


だから、そのまま話を続けた。


「美沙、今日は帰るんだよね?」


「……うん、今日は帰らなきゃ。お姉ちゃんも妹もいないから、私が帰る番」


耳まで赤くしながらも、何事も無かったように彼女も返事をくれる。


ここに帰ってきてくれたけど、今日は自宅に帰るらしい。父親1人にならないように、必ず1人か2人は姉妹が揃うようにしているらしい。


「そっか。明日は休みだって言ってたよね」


「うん。明日は休み。礼央さんの仕事復帰覗きにいけなくて残念」


あーあ。と残念そうに彼女は、天を仰いだ。


こんなこと言っていても、面白がって覗きに来たりは絶対にしないんだけどな。


「明日は1日家にいるの?」


「そのつもりですけど、また夜はここに来ていい?明日は私がご飯作ります」


……今だ。渡すなら今しかない。


彼女から出た言葉を合図に、右手でポケットの中を探り、目的の物を握った。
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