【完】白衣とお菓子といたずらと
先ほどよりも重い足取りでリビングに戻ると、騒ぎはしないけれど、お酒は進んでいるらしい3人が心配そうにこちらを見ていた。


「電話、どうでした?」


こういう時一番に話しかけてくるのは決まって池田だ。


これだけ心配させているんだ、話さないわけにはいかない。


「電話は繋がったよ。今、大阪らしい。電話の奥で男が美沙に話しかけてた。そして、明日の昼には帰るから直接話すって強制的に電話切られた。……以上」


3人の口元が明らかに引きつっている。


美沙の用事がなんとなく分かっている3人だからだろう、呆れてるという言葉が似合う表情だ。


「あのー、俺らが言うのもなんですけど、そんなに気にすることはないと思いますよ。なあ?」


香坂が大山に話を振ると、大山もうんうんと頷いた。


「そうですよ。内緒にしていたのはダメだと思いますけど……明日、直接聞いてみるべきですよ。そこで、疑念を晴らしてきてくださいよ」


「旅行とかなら、今日の昼頃出かけて、明日の昼には帰るって普通に考えたらおかしいですよ」


……確かに。大阪にいると言っていたのに、やけに滞在時間が短いことになるよな。


まぁ、疑問が増えるだけだけど。


「小川の事信じて、今日は飲みましょうよ」


はいどうぞと、強制的にグラスを持たされてしまった。


渡されるままに、これ以上考え込むのを止めたくて、グラスに口をつけ一気に飲みほした。





俺は……酒に逃げた。




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